桃太郎(温羅)伝説残る歴史ある吉備の国「岡山」。有数の桃産地でもある倉敷市玉島というところで桃づくりをしています。元はサラリーマンをしていましたが、とある時に偶然食べた桃が信じられないくらい美味しくて、全身に稲妻が走りほっぺたが落ちる体験をしました。それ以降、すっかり桃の魅力と芸術性に惚れ込んでしまい、気がつけば耕作放棄地を開墾しながら自分で桃を育てていました。本格的にゼロから独学で桃のことを勉強し令和2年に新規就農、農業の世界へ飛び込みました。現在は約1ヘクタール程の規模で20品種以上の桃をつくっています。桃の他にもミカン、レモン、ライムなどの柑橘類、ビワ、柿、イチジク、ザクロなどの果樹を栽培しています。
~樹上熟成へのこだわり~
くらねら果樹園では「超弱剪定」という栽培技術を取り入れています。近年では「岡山自然流」とも呼ばれており、むやみに強い剪定は行わず主枝の先端部分は強く大きく高く仕立てながら、樹本来の特性や生理を上手く利用しながら育てていく栽培方法です。生産能力高い健康的な樹をつくり、高品質で多収量な果実生産を安定的に行うことができる技術として今注目されつつあります。
そして当園が何よりもこだわっているのが「樹上熟成」。樹上で可能な限り熟度を上げ、一番ベストなタイミングで収穫することを心がけています。果実へ糖度と味がしっかりと入るまで待ってから収穫された桃は、まるで樹の上で熟成されたかのような深い味わいとなります。この樹上熟成を行うには、収穫期前に狙ったタイミングで意図的に樹勢を落ちつかせた状態をつくりだすことが必須条件となり、長期にわたって樹をコントロールする技術介入が必要になってきます。
~桃に学ぶダイジなこと~
まずは桃の生理をきちんと理解する。その上で、剪定、摘蕾、摘花、摘芯、摘果などの技術介入を総合的に行い、桃の樹が持つエネルギーを最大限に引き出して利用できるようにします。そして、光合成エネルギーの行き先を栄養成長から生殖成長に途中でシフトさせ、それがしかるべきタイミングで果実へと向かった時、桃の実に奇跡が起こります。この奇跡は、桃の樹が新たな命を生むためにパフォーマンスを発揮した賜物でもあり、すべての舞台と主役は桃の樹。人間はただそのお手伝いをさせてもらっているだけなので、重要なのは桃と氣を合わせ以心伝心をやってのけること。理屈にとらわれない感性と自然から学ぶ力がとても大事です。目には見えない世界ですが、微生物と土壌環境への理解は最も重要だと考えます。
くらねら果樹園では、生き物の共存と循環を創るために全ての畑で草生栽培を行って果樹を育てています。草生栽培は生命のゆりかごとなる生態系をはぐくんでくれますが、恩恵はそれだけではありません。生えてくる草の種類、状態、そこに集まる虫や動物たちからは目には見えない様々な情報が伝わってきます。注意深く観察すれば、土壌や桃の健康状態まで分かるバロメーターの役割をも担ってくれます。草、虫、鳥、ミミズ、モグラから聞こえてくる声に耳を傾け心で感じようとすれば、自然の摂理は直観と感性でおのずと理解ができます。宇宙の真理のもとに自然はものすごい合理性を持っていて、それを桃を通じて学び、思い出します。自然こそが先生であり、桃づくりの偉大な師匠なのです。
~目的のためには手間暇は惜しまない~
桃は熟すと極めて痛みが出やすく、熟度を求めすぎると商品にならなくなり、天敵のヒヨドリや夜蛾の被害に合う確率もグンとあがってしまいます。圧倒的リスク増加と途方もない収穫の手間が増えてしまう樹上熟成なのですが、小規模かつ農家直送であるからこそ繰り出せる必殺技でもあるわけです。むやみに栽培面積を拡大すれば必ず作業に追われ「人頼み、人任せ」の部分が増大していきます。そうなると丁寧な管理からはかえって遠のいてしまい、品質の低下を招くことすらあります。桃の樹は一本一本、本当に性格や癖が違うので、それぞれの樹勢や特性に応じて数年先まで見据えた個別管理が必要です。そのために当園では、あえて栽培面積を小規模にとどめ、一本の樹により時間を使い、心を傾け、全ての樹に自分の想いが行き届く範囲の中での桃づくりに尽力しております。
くらねら果樹園では、桃が一番甘くおいしくなるギリギリの状態まで樹にならせる「樹上熟成」と、「今!」を見極めた収穫に徹底的にこだわっています。せっかくご縁を頂いたお客様には一番美味しい桃を食べていただきたい。ほっぺたを落とすほど喜んでもらいたい。この一心で「樹上熟成」にこだわり、これからも桃の樹と向き合ってまいります。
LOVE&PEACH
くらねら果樹園
園主 田邉 亮
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